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緩歩動物門(TARDIGRADA)という、およそ聞き慣れぬ門に分類される「クマムシ」に関する、教養書である。
「この本は、クマムシについて日本語で書かれた一般向けの本としては最初のものとなる」と自序にあるように、良い啓蒙書で、関心を持つ諸兄にお勧めしたい。
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『クマムシ?! 小さな怪物』鈴木 忠
2008年10月15日・9刷
岩波科学ライブラリー122
112p・岩波書店・¥1300+税
初版は2006年
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「餌の問題 その二」の箇所(23-24pp)で、
「ワムシの種名を簡単に調べられるような図鑑は簡単には見つからない。ともかく日本語で手に入りそうなものを片端から見てみたが、どうもそれらには出ていないようだ。(中略)さいわい、オランダから最新のワムシの分類学シリーズが(後略)」と、記しているのは頂けない。
オニクマムシの餌とされた Lecane inermis ツキガタワムシ属の一種については、「ワカサギ図書室」架蔵範囲だけでも、既に
『日本淡水動物プランクトン検索図説』1991年,
東海大学出版会,242pp,
『日本淡水動物プランクトン検索図説』2000年,
東海大学出版会,240pp,
等が市販されており、プランクトン同定の定番・基本図書の調査不足は明白で、お気軽に書き飛ばした印象を拭えない。
それが『クマムシ?! 小さな怪物』全体の信憑性を損なうようで残念であり、「日本語のワムシ本は不完全」かの如きメッセージが、ブランド出版社のラベルを付し、増刷されていることも不思議である。
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ワカサギ研究家・よしさん

一個人のブログにまで、お目通し頂き、ありがとう御座います。
改訂され『クマムシ?! 小さな怪物』の信頼度が向上し、日本のプランクトン研究者からも歓迎されると良いですね。
誠実で正しい道を行く学者のお一人と、再認識させて頂きました。
今後とも、よろしくお願い致します。